やまと絵の名品展 ―蓬春遺愛の品々―

平成14年1月8日(火)〜3月28日(木)

日本画家・山口蓬春(18931971)の名を世に知らしめた作品として、《神苑春雨》(大正13年、第5回帝展入選)、《三熊野の那智の御山》(大正15年、第7回帝展特選)、《緑庭》(昭和2年、第8回帝展特選)などが挙げられますが、それらの作品にはやまと絵の精神が最も優美な姿で表現されています。
蓬春のやまと絵における研鑚は、松岡映丘(1881-1938)を盟主とする新興大和絵会における活動に始まり、自らの鑑識眼により生涯にわたって蒐集された古美術の名品を糧にすることによって積まれていきました。
本展では、蓬春が永年にわたって築いたコレクションからやまと絵の優品を中心に、蓬春自身が追求したやまと絵のかたちをご紹介いたします。遺愛の品々を通じて、美術家・山口蓬春の生前の暮らしを偲んでいただければ幸いです。

山口蓬春《士女遊楽図》 山口蓬春《士女遊楽図》
山口蓬春《士女遊楽図》
昭和4−5年
太田垣蓮月《騎馬人物画賛》
山口蓬春《燈籠大臣》
太田垣蓮月《騎馬人物画賛》
江戸時代後期
山口蓬春《調馬》
山口蓬春《燈籠大臣》
大正8‐9年
山口蓬春《調馬》
昭和5年
菱田春草《雛屏風 櫻草之図》 菱田春草《雛屏風 櫻草之図》
菱田春草《雛屏風 櫻草之図》
大正時代
伝俵屋宗達《伊勢物語 梓弓》
住吉具慶《定家卿小倉山観楓之図》
住吉具慶《定家卿小倉山観楓之図》
十七世紀後半
伝俵屋宗達《伊勢物語 梓弓》
十七世紀中頃
山口蓬春記念館冬季特別展(開館10周年記念)

平成13年11月1日(木)〜12月24日(月)

戦後日本画壇においての山口蓬春は、昭和25年に日本芸術院会員に任命され、日展日本画部の指導者のひとりとなっていました。蓬春は師・松岡映丘のように画塾をつくることはありませんでしたが、かれのもとには若い画家たちが集まり、蓬春一門のグループが形成され始めていました。蓬春はこれらの後進の画家たちに対して強い指導力を発揮し、戦後の日本画壇をリードしました。

 この展覧会で取り上げた5人を始めとする後進の画家たちは、いずれも新日本画の精神を受け継いだ次の世代として、戦後の日本画壇に新しい潮流を形成し、日本画の方向性を示す原動力となったのです。

山口蓬春《洩るゝ陽》 山口蓬春《洩るゝ陽》
昭和36年(1961)
浦田正夫《晨》
平成4年(1992)
大山忠作《富士翔鶴》
浦田正夫《晨》
大山忠作《富士翔鶴》
平成4年(1992) 
佐藤圀夫《洋上の富士》
加藤東一《総がらみ》
加藤東一《総がらみ》
平成4年(1992)
高山辰雄《里の道》
佐藤圀夫《洋上の富士》
平成4年(1992)
高山辰雄《里の道》
平成6年(1994)

 山口蓬春(1893−1971)は、昭和日本画壇において新しい日本画の可能性を模索し続け、日本画の進むべきひとつの方向を示した画家です。蓬春は伝統的な技法を基盤に、西欧の近代絵画を取り込みながら、日本画の技法をもって表現しうる可能性の大きさを示しました。
 やがて蓬春モダニズムと形容される世界を創り出した蓬春は、後進の日本画家にとって大きな指標となり、昭和40年には文化勲章を受章します。
 今年は葉山の蓬春自宅跡に、(財)JR東海生涯学習財団により山口蓬春記念館が開館して10年となります。本展はこれを記念し、全国の美術館・所蔵家から集めた蓬春の絵画を、ゆかりの画家たち(浦田正夫、加藤東一、大山忠作、佐藤圀夫、高山辰雄)の作品を加えて紹介し、昭和日本画壇における蓬春芸術の展開とその系譜を再確認しようとするものです。

平成13年10月6日(土)〜平成13年10月14日(日)

○場所  タワーズプラザホール(ジェイアールセントラルタワーズ12F)
     愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1−4
○時間  午前10時〜午後7時会期中は無休 ただし最終日は午後3時で終了
○入場料 無料
○主催  財団法人JR東海生涯学習財団
○協賛  東海旅客鉄道株式会社 ジェイアールセントラルビル株式会社
     株式会社ジェイアール東海高島屋
○後援  中日新聞社 NHK名古屋放送局
《青沼新秋》 昭和29(1954)年
《青沼新秋》 昭和29(1954)年
《扇面流し》 昭和5(1930)年
《松原図》 昭和7(1932)年 《松原図》 昭和7(1932)年
《松原図》 昭和7(1932)年
《扇面流し》 昭和5(1930)年
《山湖》 昭和22(1947)年
《山湖》 昭和22(1947)年
 松岡美術館蔵
《枇杷》 昭和31(1956)年
《夏の印象》 昭和25(1950)年
《枇杷》 昭和31(1956)年 
山口蓬春記念館蔵
《夏の印象》 昭和25(1950)年
《留園駘春》 昭和33(1958)年
《陽に展く》 昭和43(1968)年
《留園駘春》 昭和33(1958)年 
財団法人水野美術館蔵
《陽に展く》 昭和43(1968)年 
宗教法人霊波之光蔵

○講演会案内  10月13日(土) 午後1時30分〜午後3時
        宮城学院女子大学教授 井上 研一郎 氏
        「伝統とモダン−山口蓬春の場合」

秋期展

平成13年9月1日(土)〜10月28日(日)

山口蓬春は明治26(1893)年に、吉田五十八は翌年の明治27(1894)年に生まれています。絵画と建築との違いはありますが、2人は1年違いで東京美術学校(現、東京藝術大学)へ入学し、共に他人より倍の在学期間を経て、大正12年(1923)年に卒業しました。2人は生涯にわたり久しく交流を続け、蓬春亡き後には、五十八によってその墓碑の設計が行われました。2人はまさに同時代を生きた芸術家であり、その活動は多く共通する部分を持っているといえます。

今回は、この2人の関係に焦点をあて、昭和28(1953)年に五十八によって設計された蓬春の画室をご覧頂くとともに、「蓬春モダニズム」といわれた昭和20年代の蓬春の創作活動の源泉を探ります。

蓬春の画室にて 蓬春の画室にて
昭和32(1957)年
左より蓬春、五十八、梅澤曙軒
計志 昭和25(1950)年
蓬春の画室
計志 昭和25(1950)年
蓬春所蔵「LOFFICIEL DE LA COULEUR」より
蓬春の画室
蓬春所蔵
1952年
「L'OFFICIEL DE LA COULEUR」より
新春展「仏画展」

平成13年5月24日(木) 〜 7月29日(日)

昭和10年、以外の全ての団体と決別し「一個の自由人」となった山口蓬春−。
彼は、昭和13年以来毎年のように台湾や中国、南方の各地に赴きました。
昭和15年制作《南嶋薄暮》の背景となった台湾の海港・淡水を訪れた蓬春は南方の各地に見られる鮮やかな色彩に、殊に感銘を受けていたようです。
この度、当館開館10周年記念企画の一つといたしまして「南嶋薄暮展」を開催し、作品そのものの美しさのみならず、蓬春が初めて目にした異国風景を、現地にて制作された素描や蓬春自ら撮影した写真をとおしてご覧いただく次第です。

作品 《南嶋薄暮》     昭和15年 山口蓬春 個人蔵
   《林本源庭園 素描》 昭和13年 山口蓬春
   《小美の像 素描》  昭和13年 山口蓬春

山口蓬春《南嶋薄暮》 《南嶋薄暮》
 昭和15年 山口蓬春
 個人蔵
山口蓬春《林本源庭園》
山口蓬春《小美の像》
《林本源庭園 素描》
 昭和13年 山口蓬春
《小美の像 素描》
 昭和13年 山口蓬春
新春展「仏画展」
平成13年4月1日(日)〜5月20日(日)

蓬春の画室には、常時、自ら蒐集したコレクションの数々が並べられていました。特に、昭和30年代に入るとそれらの古美術品は、静物画の主要なモチーフの一つとなります。蓬春は、それらを繰り返し描きながら自らの作品のなかで昇華し、また新たな視点で捕えなおすことで、時を経ても変わらぬ美を現代の私たちにも伝えています。
今回は季節の素描とともに、蓬春の静物画とそこに描かれた器をあわせてご覧下さい。

作品 《枇杷》 昭和31年 山口蓬春
   《百合》 昭和32年 山口蓬春
   《静物》 昭和36年 山口蓬春
   《瓶花》 昭和41年 山口蓬春
山口蓬春《枇杷》 山口蓬春《百合》
《百合》 昭和32年 山口蓬春
《枇杷》 昭和31年 山口蓬春
山口蓬春《静物》 山口蓬春《瓶花》
《静物》 昭和36年 山口蓬春
《瓶花》 昭和41年 山口蓬春
新春展「仏画展」
平成13年1月8日(月)〜3月25日(日)

古美術愛好家として知られていた蓬春は、昭和34年〜43年にかけて文化財審議会の専門委員を務めていました。蓬春コレクションには仏画も多数含まれており、それらの研究こそが新日本画への道を切り開いた大きな要素の一つであったともいえます。宗教美術の荘厳な世界をお楽しみ下さい。

作品 《新橋演舞場緞帳原画 木蓮》 昭和33年 山口蓬春
   《観自在》 大正12-13年 山口蓬春
   《吉祥天像》 天平時代
   《模写 吉祥天像》 山口蓬春
   《布袋図》 江戸時代中頃 實堂宗傅(1612-1676)
   《稱讃浄土彿攝受経》 天和3(1685)年 中将法如
   《夜梅図》 中国・清時代 金冬心(1687-1762/63)
   《雛屏風 櫻草之図》 菱田春草(1874-1911)など。
山口蓬春《飛天》 實堂宗傅《布袋図》
《布袋図》 江戸時代中頃 實堂宗傅(1612-1676)
山口蓬春模写《極楽院ノ図》
《飛天》 山口蓬春
《極楽院ノ図》 山口蓬春模写